神山の人気スポットを訪ねる!≪文化編・人形浄瑠璃≫

こんにちは。
初めまして。スタッフの鈴木です。
普段は、事務所で経理事務をしています。
また、しずくラボでの作業にも当たっていますので、私が携わった製品がお手元にあるかもしれません。

今回は、神山に住み始めてから人形浄瑠璃を始めた私が、神山案内の1つとして、
県内でも有数の大きな農村舞台を持ち歴史と文化を育んできたここ神山町の伝統芸能の現場、人形座「寄井座」を通して見る人形浄瑠璃を紹介いたします。

阿波十郎兵衛屋敷で公演中の寄井座
徳島県立阿波十郎兵衛屋敷での公演。県内の人形座が持ち回りで演じています。

徳島といえば阿波おどりが有名ですが、実は人形浄瑠璃も盛んなお国柄。
人形浄瑠璃は、”
あわ4大モチーフ”の一つとしても位置づけられています。

さて、この人形浄瑠璃ですが、馴染みのない方も多いのではないでしょうか。
かく言う私も、徳島に来るまではかろうじて「文楽」という人形芝居があることを知っているくらいで、人形浄瑠璃については何一つ知りませんでした。
人形浄瑠璃とは、三味線の伴奏に乗せて太夫さんが物語を語る「浄瑠璃」に合わせて人形を操る伝統芸能です。
通常、一体の人形を3人で操ります

江戸時代の徳島では、吉野川流域の藍作地帯で徳島藩主や裕福な藍商人の後ろ盾によって淡路から呼び寄せられた人形座が小屋掛けの舞台を作って興行していました。
やがて、県南の山間部にも人形浄瑠璃が伝わり、村人たちが神社の境内などに舞台を建て、
人形座を作り公演を行っていました。
いずれにしても、屋外での公演であったことから、文楽よりも一回りも二回りも大きく光沢のある人形を使い、大きな振りで演じるようになったと言われています。

 

【寄井座】
寄井座は、1848年に「上村都太夫座」として結成された人形座(人形浄瑠璃を上演するグループ)です。
結成当初からずっと男性しか入れませんでしたが、昭和50年代に女性も入れるようになり、このころから寄井座と名乗り始めたようです。
寄井座が持つ人形の頭(かしら)は県の指定文化財のものも多く、衣装も数多く所有しています。
現在座員は12名。

秋晴れに、虫干ししている寄井座所有衣装。
衣装の虫干し。たくさんの衣装に年1回風を通します。
虫干し中の人形の頭(かしら)
寄井座所有の頭も虫干し。64個の頭中14個が県指定有形民俗文化財です。

 

【農村舞台】
徳島には、人形浄瑠璃を演じる舞台である「農村舞台」が数多く残っています。
農村舞台とは、先にも触れた「村人たちの手により、神社の境内などに建てられた」舞台のことです。
日本全国の人形芝居用農村舞台のうち、なんと97パーセントが徳島に存在するのです。
そういったこともあり、徳島は人形浄瑠璃が盛んな土地柄です。

ここ神山にも小野さくら野舞台という農村舞台があり、例年4月に行われる小野のさくら祭りでは、この舞台で寄井座も上演しています。
小野さくらの舞台を語るのに忘れてはならないのが「襖(ふすま)からくり」です。
人形芝居の背景である襖絵。
この襖絵が上昇したり、回転したりするように舞台にからくりを仕掛け、色鮮やかな襖絵が変化していく様を見せるという珍しい芸能です。
こちらは、地元保存会の手によって大切に守られています。

鳳凰から虎に変わっている襖からくり
襖からくり。鳳凰から虎に変わるところ。 撮影:河野公雄

 

私が神山に移住したのは、2020年秋。
ちょうど2年前のことです。
神山に来てすぐに寄井座に興味を持ったのは、もともと日本の伝統芸能に関心があったことに加え、神山での人とのつながりが欲しかったことも大きな要因です。
興味はあったものの、その伝手が無かった私は、どうやったら寄井座に入れるのかわからず、まず最初に町の教育委員会を訪ねました。座長さんに連絡を取ってもらい、連絡先を教えていただいたのですが何故か!電話が通じず…一度諦めます。

ところがひょんなことから座員さんを紹介してもらい、お会いできることに。それが、2020年末のこと。
いきなり、町外の県立阿波十郎兵衛屋敷(人形浄瑠璃の定期公演を行っている施設)にて顔合わせとなりました。
練習を見学…する間もなく、正式に座員となり、半年ほどで初舞台を踏みます。

それ以後は、県立阿波十郎兵衛屋敷での定期公演に月一で出演しつつ、浄瑠璃の大会にも出させていただきました。
というのも、座員の平均年齢も65歳以上と高いことに加え、御多分に漏れず後継者不足のため常に座員募集中の寄井座。
厳しいイメージのある伝統芸能の世界とは裏腹に、「へ?」という間に入座、かつ、新人の私でも早々にデビューできたのは、私が取り立てて上達が早いというわけではなく、そんな寄井座事情もありました。
まさに、「習うより慣れろ」
おかげで、
知識としての伝統や文化で頭ががちがちになる前に、経験や体験を通しての伝承に参加しているという感覚を味わうことができています

定期公演で演じる外題(=演目)は「ととさんの名は十郎兵衛、かかさんはお弓と申します」の台詞で(徳島県人には)おなじみの「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」
私は、故郷の徳島から大阪へ父母を探す旅をして、先の有名なフレーズを語る9歳のお鶴ちゃんの足を遣っています。
いずれ、別の役割を担うことにもなりますが、今はこの役に愛着を感じています。

「傾城阿波の鳴門」、登場人物の人形、お弓さんとお鶴ちゃん
「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」の登場人物、お弓さんとお鶴ちゃん。

寄井座に入ったことで、違う世代の方との交流を持ち、なかなか知ることのできない神山の昔の話を聞くことができたり、
生粋の神山弁に触れることができたりと、
「浄瑠璃を知る」「浄瑠璃を演じる」以外にも見識が深まりました。
初めて練習に参加した日に、のんびりとあたたかな雰囲気にほっとしたのと同時に、
大量のブロッコリーをいただいたのも良い思い出です。

公演後、説明をしている寄井座。
上演後にはちょっとした説明と人形と一緒に写真が撮れる写真撮影タイムがあります。右から3番目が私です。

しかしこの人形浄瑠璃、3人の息を合わせる難しさは想像に難くないと思いますが、
意外に体力が必要であることに驚きました。
一観客として舞台を見ている分には軽々操っているように見える人形。
実際はかなり重く(中には10キロを超えるものも)、それを手だけで支え操るのは重労働で、
練習が終わると腕が痛くなることもしばしばです。
というのは私だけかも…と思うほど、座員の皆さんは疲れた様子も見せずに練習も本番もこなしています。すごい。

そして、人形を人間らしく魅せるための所作の一つ一つの難しさ。
何年、何十年と培ってきた技術。
細かい動きに心を砕いた繊細さが、人間以上に人間らしい人形の動きを作るのです。

以上、まだまだひよっこ、人形浄瑠璃を始めて2年足らずの私ですが、
現場で感じたことを交えて人形浄瑠璃についてお伝えいたしました。

ご興味を持たれた方は、
徳島県立阿波十郎兵衛屋敷の定期公演を見にいらしてください。
YouTubeでも動画をご覧になれます。

もちろん、寄井座への入座も大大大歓迎です!!

ご参考
県立阿波十郎兵衛屋敷HP
https://joruri.info/jurobe/
YouTube 阿波十郎兵衛屋敷公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCMNAaN9JDZsHBWTFtUmkgPg