豊作のしるし!カヤネズミが棲む田んぼで米作り(2022年稲作振り返り)

(2023年1月17日追記あり)

 

こんにちは。スタッフの藤田です。

今日は冬至。1年で最も夜が長く、冬の寒さをより実感します。

おかげさまで今年も田んぼのお米を収穫することができました。

12月頭には、しずくスタッフで収穫祭を実施。自分たちで作ったお米を一緒に食べるという行為は、何にも代え難い豊かさを感じますね。

 

収穫祭で2022年のしずくの新米を食べる。会。

私としても、素人ながらに1年を通して米作りに携わることができました。

そしてこの貴重な体験をさらに昇華させたいと思い、今年は田んぼの稲藁を使って、みんなで「しめ縄飾り」も作りました。一年の締めくくりとして、また新しく年神様をお迎えする準備として、しめ縄飾りを作ることができたのは良き節目になりました。

しずくの稲藁で作ったしめ縄飾り

というわけで、今回は2022年の米作りを振り返りながら、私が気づき学んだことをダイジェストでご紹介していきたいと思います。

 

2022年の米作りをふりかえる

前回、「米作りから見えてくる、しずく的探究心」という記事を執筆しましたが、今回はその続編です。

本題に入る前に、まずはこの1年間を時系列ごとにまとめてみました。

しずく田んぼ2022年のあゆみ

この図は、米作りの工程と実施した時期をおおまかにまとめたものです。米作りにもいろんな方法があるので、時期や工程はさまざま。実際のところ、しずくでは5月に長期休暇があったので、田植えは休暇明けの6月に行いました。

米農家なら当たり前のことかもしれませんが、私自身、こんなにもたくさんの工程があることを初めて知りました。

 

田んぼにカヤネズミが棲んでいた!

突然ですが、カヤネズミを見たことはありますか?

田んぼや草地に棲む体長わずか6cmほどの小さなネズミです。

しずくの田んぼに生息するカヤネズミのイメージ
カヤネズミは日本で最も小さなネズミで、草地に生息しています。

この10月に稲刈りをした際、田んぼの真ん中付近で稲にくっつく藁の塊を発見しました。なんとそれはカヤネズミの巣!中には小さな赤ちゃんが寝ていたのです。初めて見るカヤネズミに一同大興奮の瞬間でした。

しずくの田んぼで見つけたカヤネズミの巣と赤ちゃん
しずくの田んぼで見つけたカヤネズミの巣と赤ちゃん。お母さんネズミが近くにいるかもしれないので、田んぼの隅に巣を移動しました。

かつては日本の農村地帯に多く生息していたカヤネズミも今では減少傾向にあり、一部の都道府県ではレッドリストにも載るほどの希少性の高い生き物です。

なぜカヤネズミが減少しているのか?日本では昔から茅葺屋根を作るために、全国各地にカヤ場(茅を育てる場所)があり、彼らの重要な住処でもありました。人々の暮らしが変容してカヤ場が減少するなかで、彼らの居場所も徐々に無くなっているのです。

このような現状のなか、彼らがしずくの田んぼにいることは嬉しい出来事でした。米作り3年、へたくそながらにも生き物にとって優しい田んぼになってきているということかもしれません。

 

すべてはお天道様次第

自然を相手にするということは、決してひとつの物差しで測れるものではないということも学びました。

いわゆる「一般的にはこう」と言われている常識もありますが、必ずしもそれだけが判断基準になりません。

たとえば、米作りには「中干し」という工程があります。中干しは稲全体の生育を調整するために、田んぼの水を全て抜いて土を乾かします。この中干しについても「実施目安は、田植えから1ヶ月後」など物差しは色々とありますが、これも何か1つだけが正解とは限りません。お天道様のもとでは、すべてが流動的です。どれだけ予測をたてても、自然相手の現場ではその時になってみないとわからない。

だからこそひとつの物差しで測らずに、状況ごとに作物の状態や天候をみて判断していく必要があります。

しずくの田んぼの水路から土砂を掻き出す
大雨後、水路の土砂を書き出す様子。田んぼの水路も、天候を見ながら流量を調整しました。

 

ただ見るのではなく、よく観察すること

デザインの仕事において、代表の廣瀬から「物事をよく観察すること」の大切さを教わっています。よく観察することで、その成り立ちや目に見えないことまで理解できるようになると。

よく観察するとはどういうことか?

例えば、「家から職場まで辿り着くのに、あなたはいくつ信号機を通り過ぎますか?」と問われたら、あなたは答えられますか?

人は一般的に、当たり前のことほど意識的に捉えていないことが多いです。

田んぼもそうで、毎朝ただ見にいくのと「よく観察する」のでは大きく違います。よく観察することで、些細な変化や特徴に気づくことができます。この積み重ねが、一つの物差しに頼らない多次元的な視点を養うのかもしれません。

 

米作りで大事にしていること

しずくでは農業機械の導入によって、年々作業効率が上がってきました。たとえば脱穀作業で言うと、初年度は昔ながらの農機具などを使って手作業で行いましたが、今ではコンバインを使ってかなりスムーズに行えるようになりました。

しずくのコンバインを手入れする
脱穀用のコンバインを点検する様子。年に一度しか使わないので、使用前後の手入れや掃除は必須です。

ただ、すべての工程を機械化しているわけではありません。

例えば稲を収穫した後は、ハゼかけをして自然乾燥をしています。一般的には乾燥機を使うことが多いですが、しずくでは栄養の詰まった美味しいお米を食べたくて、あえて天日干しにこだわっています。

このように自分達が大事にしたい価値は外さないのも、しずくの米作りのポイントです。

 

食べることには手間ひまがかかる

お米作りを通して、「手間ひまをかける」ことについても考える機会になりました。米作りは、田植えや収穫だけではありません。いくつもの工程、準備や後片付け、そして継続的なコミットが必要となります。

たとえば収穫後は「脱穀」や「籾摺り」という作業が発生します。しずくでは脱穀できるコンバインはあっても籾摺り機はないため、町内の農家さんに設備をお借りしました。さらに籾摺りのあとは、「色彩選別」という工程を挟みます。ここで、収穫後のお米に混じっているカメムシが食べた後(斑点)が付いた米や雑草の種、小さな石などを除去します。

徳島市国府町にあるコイン式色彩選別機械
徳島市国府町にあるコイン式の色彩選別機械を利用しました。

ただ機械も完璧ではないため、色彩選別後も最後は手作業でゴミを取り除きました。黙々と米を仕分ける時間は、もはや瞑想に近いものがありました。

色彩選別した玄米

以上の工程を経て、ようやくお米を食べることができました。

今はお金があれば、なんでも買える時代。自ら手をかけて作ることで、お米作りの工程や労力を学ぶことができました。

 

さいごに

こうやってしずくが米作りを続けてこられたのも、田んぼを貸してくださる地主さん、サポートしてくださる農家さんや見守ってくださる地元の方々、そして田んぼを取り囲む自然環境があってこそ。

米作りを振り返って改めて気づいたこと、それは私たち人間もまた自然の一部であり、すべては繋がっているということです。お米作りは、その視点を忘れないための営みでもあると感じました。食べることは命の根幹。お米作りを通して、この命の営みを忘れないようにしていきたいと思います。

 


 

この年末年始に飾った、しずくの「しめ縄飾り」をご紹介します。

田んぼの稲藁と身近な植物を使って、個性的な飾りが出来上がりました。

2023年しずくのしめ縄飾り完成品は、ストア、ラボ、事務所の三カ所に設置。

市販のものとは違いますが、お米を作るところからしめ縄を綯うところまでを自分達でおこなったことは、何にも変え難い経験になりました!