環境改善は「私たちの再生」〜竹林整備から見える自然との向き合い方〜(水源涵養WS 6回目レポート)
2026年5月19日
皆様、こんにちは。神山しずくプロジェクトです。
3月29日(日)から31日(火)までの3日間にわたり、徳島県神山町にて「水源涵養力を育む環境改善ワークショップ Vol.6〜竹との付き合い方」を開催いたしました 。
初めましての方からリピーターまで、多様な方々にご参加いただき、充実した3日間となりました !
今回も生物多様性の専門家である坂田昌子さんを講師にお招きし、森に水や空気の流れを取り戻すための「竹林整備」を実践しました 。
本レポートでは、ワークショップで取り組んだことや学びについて詳しくお伝えします。

今回竹林整備を行った場所。急斜面に竹林が広がっており、ハードな現場でした!
1. 竹と人との関わりと、放置竹林の現状
古くから日本では、竹を生活道具や建材として活用してきました。また、食材としてタケノコを食べたり、日本の文学にも登場したりと、竹は私たちにとって、非常に馴染み深い植物でもあります。
一方で、現在の私たちと竹との関わりは大きく変化しています。プラスチックのような安価で便利な代替品が普及したことや、少子高齢化による山林管理者の不足などが重なり、適切な手入れが行き届かずに放置される竹林が全国的な問題となっています 。
竹は非常に繁殖力が強く、あっという間に周囲の森を飲み込んでしまいます 。また、よく水を弾くため、地表に降る雨水の7割は弾かれてしまうそう。結果、他の植物が生えづらくなるだけでなく、土地も乾いてしまうという状況に。放置竹林では、このような現状がひろがっています。

急斜面での作業はなかなかの苦労で、滑らないように身体を地面に固定しながら慎重に作業を進めました。
2. 竹林整備が生態系にもたらす影響と「生物多様性」
密集した竹林を間伐し適切に整備を行うと、遮られていた太陽の光が再び地表に届くようになります 。すると、光を求めて他の植物が育ち始めます。また、伐採だけでなく、地表を覆っている笹の葉なども取り除けば、竹林によって弾かれていた雨水が再び地面に浸透し、結果として保水力の回復にもつながるのです。
ワークショップ1日目の午前中に行われた座学では、坂田さんから「生物多様性」の本質について学びました。生物多様性とは、単に生き物の種類(種の多様性)が多いことだけを指すのではありません。そこには「場所(生態系)の多様性」があり、さらに同じ種の中での「遺伝子の多様性」が含まれます。
四国に生息するツキノワグマを例に挙げてみましょう。彼らは現在数十頭規模まで減少し、生息域も分断されています。これは遺伝的な多様性が乏しい状態です。もしクマにとって致命的な感染症などが発生した場合、遺伝子のバリエーションがない集団は一気に全滅してしまうリスクを抱えています。遺伝的に多様な集団であるほど、環境の急激な変化やストレスに対して強いのです。
クマは人間にとっては危険な存在と言われていますが、豊かな森のバロメーターとも言われています。彼らの行動範囲は広く、食べた木の実をお腹に入れたまま遠くまで移動して糞に排出することができ、植生の拡大に貢献しているだけでなく、やがて命が尽きるとその身体は他の生き物の餌になり、また森へと戻っていくのです。
自然界では、生き物同士は必ず「喰い喰われる」関係性にあり、複雑な関わり合いが存在しています。
”死んで朽ちると、必ず何かに代わり、誰かの命になる”
この自然本来のサイクルを取り戻すことが、環境改善の大きな目的なのです。
3. 実践!竹林整備のポイント
座学が終わったあと、午後からはいよいよフィールドに出て竹林整備の実践です。
今回の現場では、他の植生にも生えてきて欲しいので、竹林は全て伐採します。

竹はちょっとでも根元が残っているとすぐ生えてくるので、発育を遅らすためにもなるべく地際の根元部分・うっすら赤い部分まで切ります。
今回行った竹林整備のステップは以下の通りです。
切り出し
まずは密集して生えている竹林をどんどん刈っていきます。
太い竹は地表に近いところで切り、細い竹は地際(時には少し地中)根元の赤い部分まで切ります。
仕分けと整理
切り出す竹の幹(かん)は、「ひとひろ(約1.8〜2メートル弱)」ごとに長さを決めて切り揃えます。そうすると、運搬や管理が簡単になります。
切り出した竹は、さらに枝と幹に分けて空き地に積んでいきます。また、青竹はそのまま燃やすと煙が出るため、枯れた竹とは分けてしっかりと乾かすのが良いとのこと。また、竹の幹が斜面を転がって事故に繋がらないよう、杭を立ててしっかりと固定します。
根元の処理
残っている根っこや、小さい竹も丁寧に切っていきます。また、太い竹を切った後に残った管の根元(節の真ん中)を鉄棒で抜く作業を行います。
その他
竹の葉は抗菌・防水作用が強いため、竹を刈った後に地面に残っている竹クズや葉っぱもなるべく丁寧に取り除きます。

切り出した竹は山に放置せず、幹から枝葉を落として、それぞれ別でまとめておきます。そうすることで場所を取らずに乾燥させることができます。
人間が少し手を入れることで、暗かった竹林のひらけた場所に太陽が当たり、予想していなかった植物が顔を出すことがあります。
竹林だけと思っていた現場には、茶の木をはじめ、みやまふゆいちご(冬にイチゴができる蔓性植物)、タラ、水辺を好むウバユリなどが確認できました。また、土の中には綺麗なミミズもいました。
このような整備を3シーズンほど根気よく続ければ、荒れていた竹林も落ち着き、今ある植生だけでなく他の植物も生えてくる可能性が出てくるそうです。

竹は防水・抗菌性が高いため、地面にひろがっている笹の葉や朽ちた竹も可能な限り取り除きます。
4. 環境改善と「私たちの再生」
都会の家や庭でもできるアクションや楽しみ方
環境改善とは、決して山の中だけで行う特別なものではありません。
都会の家や庭、ベランダでも、生態系を豊かにするためにできる具体的なアクションがあります。
鳥の水浴び場所をつくる
鳥が安心して水浴びできるよう、自然に馴染む茶色の器が好ましいそうです。
池や湿地をつくる
虫や小さな生き物が集まれるよう小さなビオトープを作ります。その際、池の深さを均一にしないことがポイントです。深浅があることで、様々な生き物が来やすくなります。
インセクトハウス(虫アパート)を作る
枯れ木や落ち葉は決してゴミではありません。虫たちにとっては大切な棲み家になります。虫を呼ぶことで、その虫を食べる鳥たちも自然と集まるようになります。
在来種の植物を植える
人が見て綺麗なだけの園芸品種ではなく、その地域の在来種を選ぶことが重要です。虫が受粉に訪れる花や、鳥が好んで食べる実をつける植物を植えることで、生き物にとって過ごしやすい環境になります。
特に自然環境が限定されている都会や町では、水浴びができたり、一休みできるところは生きものにとって貴重です。身近に里山がない方も、ぜひやってみてくださいね。

伐採したそばから、竹の水分を飲みにやってくるハエたち。彼らがここで卵を産み、生まれた蛆虫を、こんどは鳥や爬虫類などが食べにきます。
ワークショップ中に坂田さんのお話で印象的だったのは、
「竹林や山の手入れが、結果として私たちの再生でなければ持続的な活動にはなりません」という言葉でした。
かつての里山には知恵がありました。
しかし、現代ではその知恵や自然と人の関わり合いは分断されています。
知恵がないから、環境整備も「単なる施工者が入った作業」にしかなりません。
竹林や山の整備をしてどうしたいのか。
それが結果として、人と自然とのつながり直し、「私たち自身の再生」であることがとても重要なのです。
どんなきっかけでも良い。
山を手入れしながら山菜を採ってみる、摘み草をしてみる、竹を加工して道具にしてみる。
その経験が「知恵」になり、「来年もまたあの山菜を食べたいから山を手入れしよう」というモチベーションに繋がります。

現場に生えていたタラの芽。春先は山菜シーズンなので心が躍ります。
5. まとめ
〜人間の都合ではなく「相手を知る」ことの大切さ〜
ワークショップ初日の座学で坂田さんが話していた「相手を知る」ことが、環境改善においてとても重要であることを改めて感じました。
それはつまり、人間の都合で一方的に手を加えるのではなく、まずはその環境が現在どのような状態にあるのか、そして対象の植物はどんな特性があるのかを、よく観察して知るということです。
そのような考え方をした時、次に出てくる行動はきっと、自分本位なものではなくなるのかもしれません。
「相手を知ろう」とすること。
この考え方が、自然と共生し、豊かな水源を未来へ残していくための第一歩なのだと思います。このことは環境改善に限らず、人が関わり合いの中で生きていく上で、とても大切な視座だなあと思います。
参加いただいた皆さま、開催にご協力くださった皆さま、ありがとうございました!

次回の環境改善ワークショップは2026年5月23日(土)24(日)です。
直前のお申し込みも大歓迎ですので、ぜひご参加ください。
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