私たちがつくる風景(水源涵養WS 5回目レポート)
2026年2月26日

2024年からスタートしたしずくの「環境改善」。 生物多様性の専門家・坂田昌子さん(コモンフォレストジャパン理事)を講師にお迎えし、全国各地から集まった参加者の皆さんとともに、山の水が減ってしまった「めぐる谷」と名付けた場所で、乾いた大地にゆっくり雨が浸みこむよう、石や枝葉などを使って手入れをしています。
2025年10月に開催した第5回目の環境改善ワークショップ(以下:WS)、
開催日が平日にかかり、仕事などで参加が難しい人もいましたが、全国各地から参加者が集いました。
今回のWSで取り組んだことは以下の通り
・Day1:坂田さんと「めぐる谷」を歩いて観察
・Day2:照葉樹林のしがら組み
・Day3:せせらぎの上の石積み
Day1:坂田さんと「めぐる谷」を歩いて観察
初日は2024年6月から環境改善を行っている「めぐる谷」を歩きながら、坂田さんの話を聞きました。
昨年から手を入れているせせらぎエリアは、かつてコンクリートのU字溝が埋まっていたところ。これまでのWSではコンクリートをはつり、代わりに藁や石を敷いて地面に空気と水の流れが生まれるようにしました。大雨が降ると、敷き詰めた石の上を水が流れていきます。(詳細は第2回WSレポート参照)
現在のせせらぎエリアには、いろんな草花がせめぎ合って生えています。
エノコログサ、カタバミ、ベニバナボロギク、シャガ、ミズヒキ…
驚いたのは大量のチカラシバが生えていたこと。去年の秋には見かけた記憶がなく、この1年のあいだに出てきたということになります。
植樹した木々は、持ちこたえている子もいれば、残念ながら枯れてしまった子も。 参加者の皆さんと一緒に植えて手入れをしたこともあり、思うようにいかないもどかしさを感じました。

そんな中、「思い通りにならないことが自然である」という坂田さんの言葉が心に残りました。
自然はコントロールできない。だから人間ができることは、その自然がもつ力や構造を知り、本来の働きができるよう、必要最低限の手を加えることくらい。それがどのように働くかは、やってみなければわからない。
思い通りにいかない状況はあるものとして、腹落ちさせていきながら、次はどうしたら少しでも改善するのかを試し続けることが大事なのかもしれません。
Day2:照葉樹林のしがら組み
せせらぎ周りの水を増やすためには、まずはより上のエリアに手を入れる必要があります。
今回は照葉樹林の斜面沿いに、松の杭を打ってしがらを組みました。
これらの作業は、照葉樹林エリアに降った水が地面にゆっくりと浸透するようにするのが目的です。

Day3:せせらぎの上の石積み
今回手を入れるのは、めぐる谷のせせらぎエリア、そのすぐ上手にある全長2mほどの石積みです。この石積みはあまり上手にできておらず、積み石がぐらついていたり、斜面が膨らんでいました。
ここの石積みをしっかりと作ることで、水をゆっくりと浸透させるだけでなく、上の土砂が流れるのを防ぎ、石の隙間には生きものが暮らすことができます。
石積みを行うにあたって、まずは坂田さんからいくつかの法則や注意点を聞きました。 石積みの最下段にはどのような石が適しているか、石を置くときに、どういった形状や向きが良いのか、隣り合わせの石とは何箇所以上触れている必要があるか…
坂田さんの話を聞きながら、ふむふむ、なるほど!と頭ではわかったつもりでも、いざ作業に臨んでみると、この石選びはかなり難易度が高いことが判明!石積みは「石選び」で決まるといっても過言ではないそうで、みなさんかなり四苦八苦されていました!

それでも参加者一人ひとりが、「みずから考えて石を選ぶこと、積んでみること」を体験しました。
坂田さん曰く、自分の手で触れながら、試行錯誤していかなければ、本当のことが見えてこないからとのこと。時間はかかりますが、まずは自分で石を選んで積んでみて、そのあと坂田さんからフィードバックを頂く。という工程を繰り返しながら、石積みをしていきました。

坂田さんいわく、石積みは「民衆の土木」ともいうそうです。
専門的な業者や重機がなくとも、そこで暮らす人たちが自らの手で土地の手入れをしていく術なのだと。
試行錯誤しながら自分たちで手入れをした先には、どんな未来が待っているでしょうか。
今回のワークショップでは石積みは完成せず、続きは次回に持ち越しとなりましたが、これからが楽しみです。

暮らす人の思想が映し出される風景
今回のWSで坂田さんのお話で印象的だったのは、
「風景はそこに暮らす人たちの思想がそのまま現れる」
ということ。
自然豊かに見えても、現代の山・川はコンクリートに覆われていることが多いです。
それらが全て一概に悪いということを言いたいのではありません。
ただ、その土地で暮らす人たちが、どんな未来を希望するか。そしてそのために、どんな選択をしていけるか、ということが問われているような気がします。
環境改善は、正解が用意されていないテーマや問いに向き合うような作業の繰り返しです。
この取り組みでしばしば感じるのは、「今やってる作業って、本当のところ、どうなっていくんだろう」という未知の感覚です。先行きの見えない取り組みに、不安になることもあります。それでも、やり続けること。思うように行かなくても、すぐに結果が見えなくても、もどかしさを抱えながら、どうか少しでも環境がよくなる方へ進んでいくように祈りを込めて。
めぐる谷での取り組みをきっかけに、参加者の方がこの場所に愛着を感じたり、またはその方にとって、自分の一部のように感じる環境が育っていくことにつながれば幸いです。





