【ひとつの命を余すことなく】木を一本丸ごと使うということ。

2023.12 更新
こんにちは、神山しずくプロジェクトです。
1月とは思えないあたたかい日が続いたと思えば一転して、またまた冬らしい寒さが戻ってきました。
じつは寒〜い冬はわれわれにとってとても
大切な季節なのです。

それは…山仕事をする者の間では、空気が乾燥した冬といえば伐採シーズン!
すなわち
しずくは材料調達のシーズンなのです!
今年ももちろんスタッフ総出で、伐採、製材、乾燥準備と忙しく動いています。

昨年の製材の様子
昨年の製材の様子


通常、家を建てる材料の柱や床、ホームセンターでDIY用に販売されている木材なんかも、
1本の木の太い丸太部分のほんの一部だけが材料になっていて、他の大部分は使われることなく山に捨てられているのが現状です。

捨てられた木は、山の水源涵養(かんよう)機能(雨水を蓄え、長い年月をかけて川の水へと循環していく働き)に必要な下草の繁茂を妨げることになり、さらに、大雨などで植樹したばかりの小さな木の上に流れ落ち、せっかく植えた木が育たなくなってしまいます。
最悪の場合は土砂崩れを誘発してしまう可能性も。

そして放置された木材は乾いていき、とても燃えやすい状態になります。
タバコのポイ捨てやバーベキュー、焚き火で火の粉が飛び着火した場合、猛スピードで燃え広がり山火事の原因となってしまいます。
(出典:野田バイオマス発電所のここがすごい!~林地残材の活用~

搬出されない丸太が放置された山
搬出されない丸太が放置された山


しかし、しずくプロジェクト
では、そんな事は行いません!
私たちは自分たちで伐採した木を一本丸ごと使っています。

伐採した杉は商品だけでなくさまざまな用途で活用しています
一本の木がSHIZQの商品になるまで

【丸太】

木材市場に「丸太」として出回っている、あらゆる加工に適している部分。
おもに、コップ類の材料になります。
中心部は割れの可能性が非常に高く、建材・工芸品ともに使い道が限られてしまいますが、今はアロマオイルの原料として使っています。

抽出した後のチップは乾燥させて、除湿芳香剤の中身に。

丸太からSHIZQ木製品を作る切り出し方
一本の丸太からSHIZQのコップ類とアロマ製品が作られています。


コップの材料を断ち落とした端材は、大きなものは
ディフューザー用の材料になり、小さなものは薪として使用します。
以前、小さな端材をさらに小さくカットし「かけらディフューザー」と名付けてアロマオイルとセットにしたプレゼント企画を行いました。
使い方次第で、一見不要なものも愛着が持てるものに生まれ変わる…!ということを実感しました。


コップを作るときに出る削りくずは、ふるいにかけてオンラインストアの商品発送に使う緩衝材に。
残った細かい木くずは、神山町の養鶏所さんに引き取ってもらい、鶏のベッドとして使ってもらっています。


【根杢(ねもく)】

根っこに近い部分。お皿の材料になります。
地面に根を張ろうと力強くうごめき、材料ごとにまったく違う表情をしていて、毎回、どんな商品に仕上がるかワクワクしてしまいます。

根杢は光をあてるとキラキラしているのも特徴。
いろんな方向から圧がかかり、うねった樹脂や繊維が乱反射しているのではと言われています。


【枝葉】

これから商品化予定の、枝葉アロマオイルの原料になります。
枝葉オイルは2021年におためし販売済み。リフレッシュ成分を多く含んだ華やかな香りです。
「リラックス」成分豊富な杉の幹から抽出したSLEEPING FORESTと使い分けてお楽しみいただけると思います。商品化をお楽しみに◎


【未玉】

建築業界では丸太のことを「玉」と呼びます。
根元から枝葉に近づくほど節(ふし)が多くなり、玉にできない部分が「未玉」です。
製品の材料にはできませんが、細かく切って薪として使っています。


長い年月をかけて育った木を余すことなく使うのも、
健全な山の環境を取り戻したい、神山の川の水を増やしたい、という想いからです。
また先人から受け継いだ地域資源を使わせてもらうこと、植物の命をいただくことに対する、私たちなりの誠意でもあると思っています。


しずくプロジェクトは2023年の今年、7月に10周年を迎えました。

この10年の間に「神山杉」という名前が町内であたりまえに使われるようになり、
「神山杉」に対する町外の方からの関心も高まっていることを感じます。
意識が変われば現実が変わる。
神山町の山や木に対する前向きな取組みが、少しずつですが確実に増えていっているのです。

しずくにとって10年という期間はプロジェクトが始まり、やっと仕組みづくりが浸透してきた段階です。
これからもより多くの人に、木のこと、山のことを知ってもらえるよう、
そして環境改善につながる動きが増えるよう、地道な活動を続けていきます。