支柱を立て終えた苗木

「戸惑いながら、迷いながら、やるくらいがちょうどいい」(水源涵養WS 4回目レポート)

2025年7月31日

こんにちは。神山しずくプロジェクトです。

暑い日が続きますが、朝夕は涼しくなってきました。
神山では、ひぐらしの鳴く声が日に日に強くなっているように感じます。

少し前ですが、先月末にしずくで開催している「水源涵養力を育む環境改善ワークショップ(以下:WS)」がありました。

昨年からスタートしたこの取り組みも4回目。
常連メンバーから初めましての方まで
その時々で生まれる関わりの輪が繋がっていることが、嬉しいです。

今回は、第4回目WSのレポートをお届けしたいと思います。

前回のWSで植樹した苗木を手入れする参加者

前回のWSで植樹した苗木を手入れする参加者

 

しずくの環境改善WSってどんなことをしているの?

私たちは、生物多様性の専門家・坂田昌子さん(コモンフォレストジャパン理事)をゲストにお迎えし、全国各地から集まる参加者の皆さんとともに、山の水が減ってしまった場所で、乾いた大地にゆっくり雨が浸みこむよう、石や枝葉などを使って手入れを行っています。

第4回目のWSでは、WS会場であるめぐる谷の①照葉樹林のボサ作りと、②植樹エリアの手入れを行いました。

 

めぐる谷の現状と今回のWSで取り組んだこと

 

① 照葉樹林のボサ作り

1日目と2日目の午後は照葉樹林に入り、斜面を整えるための「ボサ作り」を行いました。ボサとは、丸太と落ち葉を使って作る簡易的な造作のこと。例えば、木の幹の周りなど少しくぼんだような場所に枝が溜まっているのは、自然にできたボサと言えます。

地面に杭を打ち込んでから(必要なところのみ)、斜面に対して垂直になるように丸太を配置します。

その丸太に水平になるよう枝を差し入れて固定していき、さらにその間に落ち葉を丁寧に詰め込んでいけば、ボサの完成です。

乾燥しきった斜面は想像以上に急で脆く、まるでへばり付くような体勢が続きました。一歩足を踏み外せば滑り落ちるかもしれない緊張感のなかで、ひとつひとつの動作に集中しながら慎重に進めていきました。

ボサを作ることで、斜面を流れ落ちる雨水がゆっくりと地面に浸透しやすくなります。水がしみ込めば、植物が根を張り、乾いた土地にも緑が戻ります。そうなると、豪雨などで土砂が流れ出すことも減っていきます。一見分かりづらい作業の様子ですが、完成後には地形が変わるほどの造作となりました。これからの経過観察が楽しみです。

照葉樹林でボサを作る参加者。丁寧に作ったボサの上は安定した平地となります

丁寧に作ったボサの上は安定した平地となります

 

② 植樹エリアの手入れ

2日目は、前回のWSで果樹園に植えた苗木の手入れを行いました。
この場所は照葉樹林とは異なり、ひらけた地形で日光を遮るものがほとんどありません。

あえてこのような場所に木を植えることで、将来的に木陰を生み出し、土地の温度調整や風よけとして機能することを目指しています。

しかし、いざ苗木を見てみると、思っていた以上に過酷な環境にさらされていたことが分かりました。一部の苗は根付かずぐらついていたり、野生動物に倒されていたり。
ポット苗の場合はとくに鉢の中で根が固く巻いてしまい、土にうまく広がらないまま弱っているケースも多いそうです。

固くなった苗木の根を丁寧に指でほぐしていく

固くなった苗木の根を丁寧に指でほぐしていく

まずはそうした苗木をやさしく土から掘り起こし、固まった根を手でほぐします。そして大地に根付くように、丁寧に植え直しました。一見、単純な作業のように思えますが、ひとつひとつの命と向き合うような繊細な時間でした。苗木を手入れした後は、木が安定するように支柱を立てて、それぞれに木の種類を書いて完成です。

全ての苗木が無事に育つ保証はありませんが、少しでも大地に根付く木が増えると良いなあと思います。

支柱を立て終えた苗木

戸惑いながら 迷いながら

ところで、今回のWSの最中に坂田さんがこのような言葉を仰いました。

「戸惑いながら、迷いながら、やるくらいがちょうどいい。」

人間にとって“良かれ”と思う行為が、自然にとっても“良い”とは限らない。だからこそ、効率だけを追わずに、少しずつ丁寧に、手探りで自然と向き合う姿勢が求められているということ。
環境改善WSに参加したことがある人であれば、この言葉がどこかしっくりくるのではないかと思います。
実際、WSで私たちが取り組む作業は、どれも正解が用意されておらず、自然の経過を見ることでしか変化がわかりません。

WS後の自主的な手入れでは「これで本当にいいのだろうか」と思いながら作業することもしばしば。結果がすぐに見えず、「あれでよかったのだろうか」と不安になることも。さらには、造作した場所が野生動物に崩されて、がっかりするときもあります。
でも坂田さんは
「動物の餌場になるくらい、きちんと造作できた証拠。イノシシにハナマルもらったね!」
と笑います。

すぐに分かる正解はないこと、表面的な結果の奥にあるものを読み取る姿勢。
それは頭を使い、体を使い、時間を使うことでしか得られない、大切なテーマであるとWSを重ねるごとに感じています。

まだ新しい山足袋姿のリピーターさんと、素手で確かめるように作業を行う坂田さんの姿に胸が熱くなりました。

逆に言えば「向き合わないとはどういうことか?」ということについても同時に考えさせられました。

坂田さんいわく「手っ取り早く、効率よく、人間の都合で自然を手入れすること」。かつて「獣害」「害虫」「雑草」という言葉は存在せず、農薬や除草剤とともに生まれてきたそうです。

私たちは関わり合いの中で生かされ、たがいに影響しあい生きています
その繋がりについて配慮し行動することは、「戸惑いながら、迷いながら」行うことを自分や他者に許していくことではないでしょうか。
与えられた正解がないからこそ、変化をつぶさに見守り、よりよくしていくために考えや行動を柔軟に変化させていくことが重要であるということ。

そのようなことも考えさせられるWSでした。

ちなみに、今回のWSの様子が徳島のローカル局「ケーブルテレビ徳島」の公式Youtubeにて公開されました。昔ながらの工法「ボサ作り」に取り組む様子をご覧いただけます。

動画はこちらから

参加者全員で集合写真。今回も東京・大阪・岡山・アメリカ(!) の遠方から、車で5分のご近所さんまで、さまざまな方が参加してくれました!

今回も東京・大阪・岡山・アメリカ (!) などの遠方から、車で5分のご近所さんまで、さまざまな方が参加してくれました!

次回のWSは10月!

「水源涵養力を育む環境改善WS」は、2025年10月2〜4日に開催を予定しています。

今回整えた照葉樹林の斜面や、手入れした苗木のその後の様子も確認しながら、さらに深く自然と関わる時間となるでしょう。戸惑いながら、迷いながらでも、一歩一歩進んでいくその過程を、また一緒に共有できることを楽しみにしています。


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