こんにちは、神山しずくプロジェクトの藤田です。
朝夕だんだんと涼しくなってきましたね。
秋に収穫を迎える「神山すだち」。
昨年は「裏年」と呼ばれる不作の年でしたが、今年は豊作!
9月はすだちを載せたトラックをたくさん目にしました。
突然ですが「田舎暮らし」と聞いて、みなさんはどのような印象をお持ちですか?
自然が豊か、空気が美味しい、のどかな暮らしなど、人によって様々なイメージがあるかと思います。
そんな田舎暮らしには、予期せぬハプニングがつきものです。
かくいう私も、神山で暮らし始めてからいろんな出来事を経験することになりました。
今日はそんな、私のドタバタ?実体験をまとめてみました。
田舎暮らしや古民家に興味がある方に、少しでも参考になれば幸いです!
Topics
・築120年の古民家との出会い
・大量の荷物と向き合う
・夏は生き物、冬は寒さとの闘い
・どうする!?シロアリ対策
・改修で大事にしたこと
・古民家が息を吹き返す
・おわりに
築120年の古民家との出会い
しずくでの仕事をきっかけに、本格的に神山で家探しをしていた私ですが、ご縁があって一軒の古民家と出会うことができました。
そこはなんと、築年数120年!
120年前といえば明治初期、日露戦争がはじまった頃です。(神山には築100〜200年の古民家がいくつもあります。)
私が生まれるずっと前からここに在って、地域の人たちの暮らしや時代の変容を見つめてきたのでしょうか。そんな風に古民家に想いを馳せると、なんとも感慨深い気持ちになりました。
家の一部は改修が必要な状態だったので、住みながら手を入れていくことに決めました。
大量の荷物と向き合う
まずは古民家の荷物を出すところから始まります。
長年人が住んでいた家には、たくさんの荷物が残っていました。片付けは、骨の折れる仕事です。出しても出しても、なかなか減らない荷物。私の場合、大家さんや周りのサポートもあって救われましたが、トータルで半年ほど片付けに費やしました。
古民家は「闘い」の連続
田舎暮らしは、街の生活とは違った出来事がたくさん起こります。
とくに古い家は隙間だらけなので、どこからともなく生き物が入ってくることも。ムカデや蜂など、毒を持つ生き物にも要注意です。
また、梅雨頃から湿気がこもるようになります。
木製品や革製品は、だいたいカビが生えます。
古民家に合うように…と思って手に入れたシーグラスのスリッパやカゴ製品も、
速攻で見たことのないふわふわのカビが生えました…
毎日の換気はもちろんのこと、夏場はとくに湿気対策に励む日々が続きます。
冬になると、今度は寒さとの「闘い」です。
2023年の大寒波では見事に水道管が破裂し、途方に暮れました。
暮らしてみて初めて気づくことの多さたるや。
ハプニングは、ある意味「良き学びの機会」でもあります。
これについては、後ほど詳しく触れたいと思います。
どうする!?シロアリ対策
もっとも頭を悩ませたのは、シロアリ問題でした。改修を進める中で、なんと床下や家の裏側に、シロアリの食害を発見したのです。
木造建築であれば必ずといっていいほどつきものであるこの問題、放置しておくと家の倒壊にも繋がります。
駆除業者にお願いする方法もありますが、今回は予算が限られていることもあり、以下の対策を試してみました。
1.「ホウ酸」を使った駆除・予防
2.「ベイト剤」を使ったシロアリ駆除
3. 十分な湿気対策
ひとつめですが、実はシロアリ対策に有効な「ホウ酸」。
シロアリやゴキブリなど、腎臓を持たない生物がホウ酸を摂取すると、代謝することができず体外に排出することができないため、巣に戻って死滅します。引用元
このような理由に加え、木材の防腐効果にもなることや、人体への影響はほとんどないとのことで、使ってみることに。今回の改修では、老朽化した床を剥がして新しく束柱や根太を入れたので、床下の材を中心にホウ酸液を塗りました。
2つめは、家の周りに「ベイト剤」(=毒餌)の入った容器を設置したこと。ホウ酸だけでは心許なかったので、これも駆除の一環として行いました。
そして3つめの湿気対策。
床下に竹炭を撒いたり、湿気がたまりやすい部屋は古い壁を抜くなどして、風通しをよくしました。
どれだけ効果を発揮するかは未知数ですが、しばらく経過観察する予定です。
以上のように、シロアリ、カビ、虫やトカゲなど生き物との接触から家の修理まで、この1年だけでも想像を超えたハプニングがたくさん起こりました。
出来事だけに焦点を当てると、街の暮らしの方が圧倒的に楽です。
虫も少ないし、綺麗なアパートもたくさんあります。水道管が破裂することもなければ、買い物や移動も便利でしょう。それはある意味、人の意識が行き届いた人工的な環境ともいえます。
一方で田舎に行けば、人工的な物が減って、より自然に近い環境に身を置くことになります。
季節に移ろいがあること、生き死にがあること、
こういった変化のなかに、自分という人間もまた存在していることを感じます。
田舎暮らしとは、「私という人間が自然の一部である」ということを、身体的感覚を持って取り戻していく機会なのかもしれません。
古民家でのハプニングは、自分ごととして引き受け取り組むことで、次に活かすことができます。もしかしたら、こんどは誰かの力になれるかもしれない。
そういう意味で、私にとってハプニングとは良き学びの機会なのです。
改修で大事にしたこと
古民家の改修では、なるべく地元の材料や、環境にやさしい素材を選びました。
身の回りの自然に私たちの健康が支えられる様に、身近なものを使うことでこの土地に適した空間ができると考えたからです。
床材には、しずくでもお世話になっている金泉さんをはじめ、地元の製材所にお願いして「神山杉」を挽いてもらいました。
その他にも、1300年の歴史をもつ地元・阿波和紙を壁に貼ったり、合成接着剤などの石油系成分を使用していない土佐漆喰を使いました。
古民家が息を吹き返す
改修をきっかけに、大工さんやご近所さんなど、いろんな人が家を訪れるようになった古民家。初めてこの古民家に足を踏み入れた時は、時間の流れが止まったかのような雰囲気でしたが、少しずつみんなの手が加わっていくことで、この家が再び息を吹き返していくように感じました。
大工さんいわく、
「この家は、あと100年は持つなあ。」とのこと。
時代を超えて人の暮らしを支える家、それを造る大工さんの技術に感銘を受けました。
おわりに
田舎暮らしは、想像を超えた出来事の連続です。
私は徳島県西部の出身ですが、山暮らしには慣れていません。
古民家の改修は、自分の非力さを痛感する日々でもありました。そして何度も周りの人たちに助けてもらいました。
人は1人では生きてはいけないということ。
この当たり前すぎる事実を、身をもって経験したように思います。
今回学んだことが私の生きる糧になり、こんどは誰かの力になれるよう、今後も田舎暮らしの技術と知恵を磨いていこうと思います。