【職人レポート】 ものづくりの現場から「刃物鍛冶編」

こんにちは。しずくの職人の藤本です。とても暑い日々が続いていますね。
僕はというと、こんな太陽がサンサンと降り注ぐ時期に、熱い火の前で作業をする刃物鍛冶をしています。。

オリジナルの道具や材料を使用することが多いしずくの器。刃物もその大事な道具の一つです。
普通、木工の刃物は市販のものを使ったり、専門の業者さんに作ってもらったりしますが、木工ろくろでは自ら刃物鍛冶を行います。

特にしずくの器は杉の繊維が横目。夏に大きく育った柔らかい年輪と、冬に締まって育った固い年輪を同時に加工します。
このギャップのある木目を均質に、凹凸のなく削るために絶対に欠かせない相棒が、刃物なのです。

どんなものづくりでも切っても離せない重要な役割を担う刃物。
今回はそんな「刃物鍛冶」をより詳しくご紹介します!

炉で火を起こし金属を熱して、叩いて研いで、刃物鍛冶を行います。
(※この火起こすための炉[鍛冶場]も師匠に教わりながら、自分で工場に作りました。)

刃物は製品を作るたびに何回も研いで使うので、すり減っていきます。
使ったら削る鉛筆と一緒で、刃物もまた新しく使えるようにメンテナンスする必要があります。
ですので、2〜3ヶ月に一回は刃物鍛冶をしないといけません。

そのタイミングがこのとても暑い時期と重なってしまいました。。。
とはいえ弱音なんて吐いていられないので、気合いを入れ直し、作業にとりかかっていきます。

工程ごとに分けて説明すると、、
炉で鋼材を熱する→叩き延ばして幅、厚みを調整→曲げて形を作る→荒研ぎ→全体の形を整える→焼き入れ→仕上げ研ぎ→完成

はじめに炉に火を入れ、刃物になる鋼材を熱します。
材が加工出来るほどに熱したら、金づちで叩いて延ばし、使う用途によって幅や厚みを調整していきます。

金属は固くて厚みもあるので叩くだけで体力を消費します。火の前にいるので尚更です。
サウナで運動しているようなもの。

鉄が冷めると加工できなくなるため、いちいち定規で計るなんて事はできません。
今までの経験を頼りに、自分の感覚を信じて、理想の寸法に合わせていきます。
まさに「鉄は熱いうちに打て!」なのです。

熱いうちに叩き延ばす

次に曲げの工程です。鋼材を十分に熱し、タイミングを見て、曲げの加工を行います。
このタイミングは、色で判断します。黄色よりほんの少し白い時を狙って火から取り出し、叩いて曲げていきます。

タイミングが早すぎると鋼材が割れてしまい、使い物にならなくなります。
決して後戻り出来ない、緊張の瞬間です。

成形の後は、木材と接する刃の面を平に荒研ぎしていきます。
ここで波打ってしまうと全てが台無し。傷が残らないように、平行に気をつけて慎重に研いでいきます。

表面の皮や凹凸を落とす

刃の荒研ぎが終われば、全体の形を整えていきます。使う用途に合わせて形を調整します。
この後に焼き入れをする事で鋼材が固くなります。
そこから更に削り落としていくのは大変なため、今のうちに形を整えておきます。

焼き入れ!刃物の集大成!全てがここで決まる!

本当に刃物鍛冶はどの作業も後戻り出来ないものなのですが、この焼き入れが一番難しく、刃物のできあがりを左右します!

もう一度火を起こし刃物を熱します。炭の置く位置を考え、色と炎の出方を今までよりも勢いよく、温度が高くなるように調整していきます。

炎が赤からオレンジ〜黄色〜白に変わっていきます。
この時の色が美しく、暑さを忘れ、ついつい見とれてしまうので注意が必要です。

温度の調整をする様子

そうこうしている内に鋼材の色も変わっていきます。

オレンジ〜〜黄色〜〜薄い黄色〜

白色になりかける少し手前の色の一瞬を見極め、炎から取り出し、油に一度つけて少し冷やしてから、その後水につけて冷やす。
水で一気に冷やすと亀裂が入るため、油につけるワンクッションは重要なポイントです。

それぞれのタイミングが少しずれるだけで、柔らかくなってしまったり、割れてしまったりする難しい作業。

焼き入れがうまく言った事を確認し、仕上げの研ぎをしていきます。

焼き入れされて黒くなった鋼材の表面をグラインダー(棒状の砥石が高回転する機械)で削り落とすと、固くて締まった鈍く光る金属の肌が顔を出します。うまく焼き入れで来た事に安心しつつも、この先の仕上げ研ぎの苦労を考えると。。。

実は固い刃物の方が傷が落ちにくく、それはもう研ぐのが大変なのです。
最後の仕上げの研ぎも慎重に、荒→中→仕上げと研いでいきます。

最後の細かい目の砥石による仕上げ研ぎの様子

研ぎ傷が残っていると、その傷が木に引っかかり、仕上げの加工に影響します。
後の作業の効率を考えて、手を抜かずに研ぎ上げます。

鏡面のように周りの風景がうつり込むほどに研げたら完成です。

鏡面になるまで砥石で仕上げる

刃物を作るだけで一苦労なのですが、、この刃物のできは、このあとの削りの作業に大きく影響します。
密度の高い、硬く締まった刃物ができあがれば、木の表面を凹凸なく仕上げることができるため、サンドペーパーをかける手間も減って木地の仕上がりも良くなるのです。

また、切れ味が長く続くため研ぐ回数も減ります。研ぐ回数が減れば、刃物もすり減っていかないので長く使うことができるのです。

修行始めた頃によく「段取り八分、仕事二分」と怒られましたが、恥ずかしながら、今になって意味がようやく理解出来るようになってきました。今日からまた基本に立ち返って精進していきます。

 

今回はちょっとコアなものづくりの裏側を紹介しました。
これからも工場での様子をお届け出来ればと思います!
次回の職人レポートもお楽しみに!

 

 

手がけた刃物を使った削り作業の様子は、こちらの記事でご覧いただけます。

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