【職人レポート】ものづくりの現場から「タンブラー 成形編」

こんにちは。しずくの職人の藤本です。

ようやく梅雨が明けて暑い夏が始まりましたね。僕はというと、蒸し暑い工場の中で今日も汗を拭いながらも頑張って製作に励んでいます。

ちょうど今、タンブラーに取りかかっているところです。
今回はその製作の様子を、職人の僕自らお届けしたいと思います!

まず、皆さん「木工ろくろ」という言葉をご存知ですか?
木工の業界でも少し珍しい技術なので、聞き慣れない言葉ですね。
テーブルの足や、お皿やお椀、お盆など、古くはお寺や仏壇の装飾品の製作に使われてきました。
分かりやすく説明すると、木を丸く加工されている物はほとんどが「木工ろくろ」で作られたと言っても過言ではないでしょう。

高速で回転させた木材に、刃物を当てて削っていくのです。

しかもその歴史は長く、平安時代からある日本の伝統技術なんです。
そういった「木工ろくろ」の技術でしずくの器は作られています。

その「木工ろくろ」でどのようにしずくが作られているかと言いますと、、ざっくり大まかな工程は、

製材して角材を作る→角材を円筒形にする→外側の形を削る→内側を刳り貫く→仕上げに細かい傷を消す→完成です。

円筒形にするまでは旋盤と呼ばれる一般的な木工機械で行います。

職人の仕事は、ここからが本番!円筒形にざっくりと削られた材から、外側のフォルムを削っていきます。

頭の中に完成形を思い浮かべ、ギリギリの寸法まで荒い刃物で削ります。フォルムが合っているかを確認するの道具はありますが、形づくっていくのは、イメージを重ね合わせる想像力と、経験則だけ。

これだけで、なめらかに広がるタンブラーの外形を決めていきます。

荒削り刃で削り終えたところ

形が決まったところで、刃物を替えます。仕上げ用に持ち替え、薄皮を一枚ずつ削ぐように慎重に刃を当てていきます。

ここが、木工ろくろの仕事の見せ場。

しずくの特徴である、年輪が横目になる加工は柔らかい年輪の層と堅い年輪の層のギャップが激しく、この性質の大きく異なる素材をひとつの刃で、凹凸のない状態に仕上げる削りには、最も神経を使います。

刃物を何度も研いで常にベストの状態に保つ必要があるんです。

仕上げ刃を終え、目の粗いサンドペーパーから、細かいものへと何枚も丁寧に当てます。このとき、ある瞬間に、表面が光り出します。無垢の木が光を反射するほどに、平らな鏡面になったところで、外側がようやく完成です。

 

内側の刳り貫きの作業は更に骨が折れます。
内側は刃先が当たっている箇所を目で確認する事が出来ないので、感覚だけを頼りに削り進めます。
力んでしまい刃物の角度を間違えると刃先が木材に食い込んで、回転している木に弾かれて中で刃物が暴れ、途中まで作った物が粉々になってしまうこともあるのです。

慎重に、荒削り刃→仕上げ刃→ペーパーと進めていきます。

最後に、回転させるために木材を固定する際に、どうしてもついてしまう小さな傷をペーパーで綺麗に取り去って、全体の細かい傷をチェックして、やっと完成となります!

ちなみに、製作に必要な道具や刃物などはすべて自分で作っています。
たとえば内側を削る際に、外側のラインに合わせてハマるようになっている固定具。これは製品に触れるところだけ柔らかい素材に変えています。杉は柔らかいので仕上がりや作業中に傷が入らないようにする工夫が絶対に不可欠ですが、杉以外の素材では必要がないものです。
こんな風にこれまでの教わった技術を受け継ぐだけでなく、少しづつ細かい改良を重ねて自分の身体や時代の要望に合わせて変化していくことも大切にしています。

左から外側用・内側用・仕上げ用の固定具。

まだまだ紹介したいことはたくさんあるのですが、今回はここまでとしたいと思います。
杉という難しい素材にチャレンジし、日々技術を向上出来るのも沢山の方々に支えらているからだと思います。これからも皆さん応援よろしくお願いします。


今回お届けした製作の様子はこちらの動画でもご覧いただけます。
合わせて是非ご覧ください!

youtube: https://www.youtube.com/watch?v=ZJG-O1ufYtg&w=560&h=315